2006年08月13日

旬のトマト丸かじりへの道(1)「コーヒーなんてまあこんなもの?」

春木屋「Gettekian」店長のYukaです。
今日からしばらくの間、スペシャルティコーヒーについてのお話しを連載したいと思います。
コーヒー業界の裏側なども含め、つたないですが、私の体験です。
今回はその第1回目、多くの方が感じているのではなかろうかと思われる、コーヒーに対するモヤモヤを私とスペシャルティコーヒーの出会いなどにからめつつご紹介したいと思います。
コーヒーのお話しなのにタイトルが「旬のトマト丸かじりへの道」というのも変ですが、旬のトマトを丸かじりした時のようなシンプルな感動を単純にコーヒーにも求めて私が右往左往してきたことから題名にしてみました。

旬のトマト丸かじりへの道(1) 

「コーヒーなんてまあこんなもんかな」「ケーキがあれば美味しく飲めるよ」「やっぱりブルマンが最高でしょ」
スペシャルティコーヒーに出会う以前の私のコーヒーに対する感覚を端的に表している表現です。
私がコーヒー豆の仕入れに携わるようになってかれこれもう20年近くになります。コーヒーは以前から好きでしたが、正直「ハッとするほど美味しい!」と思うような瞬間というものにはあまり出会ったことがありませんでした。
これは自店で扱っているものも含め、他の様々な店舗で売られているものや、喫茶店、レストランなどで提供されるものについても共通した印象でした。
コーヒーが本当に美味しいと思えるのはケーキなど甘いものと一緒に飲んだ時ぐらいかなとか、実際の味というよりは例えばブルーマウンテンやキリマンジャロなどのようないわゆるブランドを安易に信じ頼っている部分が大きかったと思います。
その間、絶えずコーヒーを扱う中で漠然と抱いていたコーヒーへの感覚というのは、「まあコーヒーなんてこんなもんかな」というなんともモヤモヤとした印象でした。
真っ赤に熟した取れたてのトマトを食べれば単純に「あ〜〜お・い・し・い〜〜!!」ってなりますよね。同じ農産物なんだから、旬や鮮度といったポイントさえはずさなければ単純にけっこう感動できるものができるような気がするんだけど・・・、まあコーヒーはちょっと違うのかな?って思っていました。

そんな中、10年ほど前のことですが、東京のとあるカフェでとってもおいしいコーヒーをいただく機会に恵まれたんです。それはまさに「ハッとするほど美味しい!」コーヒーでした。まさに旬のトマト丸かじりと同じ感覚でした。実はこれが私のスペシャルティコーヒーへの挑戦を意識させてくれた出会いです。カフェの店長さんにこのスペシャルティコーヒーについて、農園のことや品種、栽培・精製方法などについて熱くご説明いただく中で、私の中で長らくコーヒーについて抱いていたあのモヤモヤとした感覚が一気に晴れていきました。それまで上質なコーヒーというのは特殊なルートで特殊なところ、例えば銀座の老舗喫茶店「ランブル」さんのような極めて限定されたところでしかお目にかかれないものと思っていた私に、遅ればせながら「ああ、お茶もコーヒーも同じなんだ」ということに気づかせてくれたのです。
当店は元々日本茶の専門店、自慢じゃありませんが、おいしい日本茶のことならお手の物です。産地や畑、生産者のことから、流通、製茶、保管に至るまで、何がどのように最終的にお茶の味に影響するか、そしてそうした情報管理をすることで、加工品である日本茶も、旬のトマトを味わうのと同様のレベルで「美味しい一杯のお茶」になるのだということを経験上理解していました。
思えば、それまでの私はあまりにコーヒーについて無知でした。おおまかなコーヒー産地や焙煎、淹れ方などの知識はあっても、どれも表面的なもので、美味しい一杯のコーヒーができるまでの過程をトータルに考えたことがありませんでした。コーヒーの生産地は遠い外国、流通経路も大変複雑なこともあり、どこでどのように栽培されたコーヒーがどのような処理を受け、どのような経路で日本に来て、そして自分の手元にもたらされているのか、つまり「美味しい一杯のお茶」を求めるためにこれまで当たり前のこととしてやっていたことをコーヒーの世界ではまったく把握していませんでした。把握していなかったというよりは、中間業者まかせで、把握しようとしていなかったというのが本当のところです。後から考えれば当たり前のことなのですが、お茶もコーヒーも農産物、工業品のように単純な規格化や安定した商品供給には無理があります。どちらも「美味しい一杯」のためには、生産から最終的に飲まれるシーンまできめ細かなケアが必要です。
こんな単純なことになぜ今まで気づかなかったのだろうという鈍感な自分への腹立たしさ、「まあコーヒーなんてこんなもんかな」なんていう気持ち自体、それは自分自身が中途半端にコーヒーに携わっていたからこそ抱いた感覚であって、そんな中途半端な気持ちで中途半端な商品を売っていたことに、正直「穴があったら入りたい」心境になってしまいました。しかし同時に、繊細な日本茶を扱うのと同じ感覚でコーヒーを扱えば、きっと今までとは別次元の「美味しい一杯のコーヒー」が生まれる、日本茶専門店だったからこそできるような繊細なコーヒーを提供することができるに違いないとも思えたんです。なんだか希望の光が見えた気がして、ちょっとだけ嬉しくもなりました。
それからです、当店の「旬のトマトを丸かじりしたときくらいハッとするような美味しいコーヒー」を探求する長い道が始まったのは・・・
つづく


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