2008年05月22日

マンデリンを生む不思議な地、スマトラ島・・・

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深煎り、苦味系の代表格、インドネシア、スマトラ島産のマンデリン。
現在当店では、北部アチェ州の希少種ティムティムを紹介中ですが、
それ以外にも量は少ないものの、アテン、ラスナ、ジュンベルなどとても素晴らしいマンデリンがいくつかあります。

このマンデリンを生み出している、インドネシアはコーヒー栽培のとても古い歴史を持つ島でもあります。
コーヒーはもともとエチオピアからイエメン周辺が原産地とされています。
当時非常に高価で重要な交易品でもあったコーヒーの種や苗の管理は厳格なもので、17世紀に入るまでは他の地域で栽培されることもありませんでした。
大航海時代の幕開けと共にアジアに進出したヨーロッパ列強、特にオランダはいち早くコーヒーに目をつけました。
イエメンやエチオピアのコーヒーをインドからインドネシア諸島で大々的なプランテーションとして栽培するようになります。
つまり、インドネシア、マンデリンの産地は歴史上初めてエチオピア、イエメン以外で作られたコーヒーということになるわけです。

今となっては推測の域を出ることはありませんが、当時様々な原種コーヒーがこの地にもたらされ、栽培がされたはずです。(当時としてはコーヒーの品種などの意識はなかったかもしれませんが)
19世紀にコーヒーの天敵とも言えるサビ病の大発生によって大半のコーヒーが全滅してしまいますが、その後も各地で細々と、しかし非常に上質なコーヒーが生き残り今に伝えられています。

インドネシアは島国ですが、非常に入り組んだ地形と高い山、熱帯特有の原生林などに覆われていて交通状況の極めて悪い地域です。民族的にも非常に他民族国家でもあり、狭い地域であってもそれぞれ独自の文化形態をとっているところも多く、いわゆる隔絶された「村社会」が歴然と残っています。
政治的にも不安定な体制が長く続き、失礼な言い方になってしまいますが、教育レベルも高いとは言い難い。ましてやジャカルタなどの大都市から遠く離れたコーヒーの栽培地域などではなおさらです。
このような環境は幸か不幸か昔ながらの品種や栽培方法が今もそのまま残っていたりします。
現在ご紹介中のアチェ、タケンゴン村のティムティムもまさにその典型のようなコーヒーです。

マンデリンのスモーキーでどっしりとしたボディ、独特のフレーバーはこのような環境、品種からの由来と、もう一つ重要なのが、その精製方法にあります。

コーヒーチェリーの構造を簡単に言うと、「ぎんなん」を想像していただくとわかり安いと思います。果肉の中に固いカラがあって、さらにその中にあるのがコーヒー豆となる部分で、いわゆる「生豆」。これを焙煎してコーヒーになります。
この生豆に仕上げる工程が「精製」とよばれるものですが、マンデリンの精製過程はとても変わっています。
スマトラ式とも呼ばれるマンデリンの精製方法はこの地域だけの独特なものです。
一般的にコーヒーの精製方法は摘み取ったコーヒーチェリーをそのまま天日でからからになるまで干してから脱穀をする「ナチュラル」、
摘み取ったチェリーの果肉をすぐに機械でむき、残ったヌメリを取るために水槽などで醗酵処理をして乾燥させ、脱穀を行なう「フルウォッシュド」、
果肉を取った後のヌメリを天日乾燥で乾かし、脱穀する上記二つの方法の中間的な「パルプドナチュラル」というの三つの方法があります。
生豆が元々持つ香味がより重要であることは言うまでもありませんが、この精製方法によっても味わいは変わってきます。一般的にナチュラルはコクが強くなり、フルウォッシュドはすっきりとしたきれいな香味になるとされ、パルプドナチュラルはその中間的な仕上がりと言われています。
チェリーの収穫時期に雨のほとんど降らないブラジルやイエメンではナチュラル精製が今も行なわれていますが、異物混入のリスクなどもあり、世界的にはフルウォッシュドが一般的となりつつあります。

マンデリンの精製方法はパルプドナチュラルに近いのですが、果肉を除去した後、ヌメリを取るための乾燥をあまり行なわずに半乾きのまま脱穀をしてしまいます。
そして生豆の状態になったものを仲買人などの業者がさらに乾燥させて仕上げています。
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なんで、こんな面倒な方法を取るのかといいますと、
収穫の時期はスコールなども頻繁にある季節で、ナチュラルはそもそも不可能。
本来、水資源にはさほど困らない土地柄ですからフルウォッシュド精製の選択が一番いいような気がしますが、実際にはインフラの遅れや資本不足もあり、大半が小規模農家で作られていることもあって大きな施設を必要とするフルウォッシュドも不可能。
必然的にパルプドナチュラル、ということになるのですが、やはり天日乾燥は十分に行なうことは難しく、半乾きの状態で生豆にしてしまう、ということになったようです。
なぜ強引に半乾きで生豆にするかと言うと、コーヒーバイヤーさんたちは生豆で買付をおこないますので、生豆にしないと農民達は現金収入を得ることができないから。
単純と言えばこれほど単純な話しもないような理由ですね。
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ちなみに、生豆にした段階で約50%程度の水分を持っていますので、放っておくともちろんすぐに腐ってしまいます。交通事情の悪いスマトラでは、農民から買い取った生豆がバイヤーの乾燥工場(ここでさらに水分量15%以下まで乾燥させてから輸出されます)に持ち込まれるまでに腐ってしまったり、醗酵してしまったりすることが少なくありません。マンデリンの上質なものを捜すのがとても難しいことの理由の一つです。

理由はともかく、スマトラ島の自然環境と農民の置かれた経済環境が合わさって、この土地独自の精製方法が生まれました。このスマトラ式とも呼ばれる精製方法がマンデリンの独特なフレーバーを作り出す大きな一因となっています。

古い歴史と独特の生産・精製方法。マンデリンって本当に奥が深いです・・・。

余談です。
先日もご紹介しましたが、アチェの2000m級の高地で収穫されたマンデリンとしては驚くほど小さな粒のコーヒーがもうすぐやってきます。
ティムティムはマンデリンらしいフレーバーのなかに柔らかい甘味のある極めてマイルドなマンデリンとご紹介しましたが、こちらのチビ豆マンデリンはマンデリンらしいフレーバーの中にまるでエチオピアのイルガチェフェのようなフルーティーできれいな香味があります。
やはり、マンデリンは奥が深い・・・。すごいのがまだまだありそうです。


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