2009年10月18日

SCAJ2009に行ってきました

SCAJ2009に行ってきました。
SCAJというのは日本スペシャルティコーヒー協会の略称で、アメリカのSCAA、ヨーロッパのSCAEと並び、世界のトップクオリティコーヒーの生産、流通、消費をサポートする目的で作られている団体のことです。
弊社もSCAJの法人会員の端くれに名を連ねさせていただいていることもあり、毎年、年に一度のコンベンションで、内外の関係機関の集まるこのイベントに参加させていただいています。

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このイベントには世界各国のコーヒー業者が集まり、業者間どうしの商談が行われたり、それぞれの生産国ごとにそのお国のコーヒー紹介などのワークショップなどが盛りだくさんで開催されます。
また、毎年世界中のコーヒー職人の技を競い合う、世界バリスタ選手権の日本予選決勝が行われたり、日本独自のサイフォンでのコーヒー抽出、サービス技術を競い合うサイフォニスト選手権などの様々な競技会も同時に開催され、イベントを盛り上げております。
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さて、そんなイベントの中で今年私共が目玉と考え参加したのは、コーヒーマイスター限定として開催された、コスタリカの様々な品種のコーヒーのカッピング(味の目利きのことです)とスイーツとの相性、マリアージュについてのワークショップでした。
コスタリカはあまり日本では馴染みが深くありませんが、1940〜70年くらいまでは世界最高峰のコーヒー生産国として知られていた由緒正しいコーヒー生産国です。
中米の細長く起伏に富んだ自然環境は山ひとつ谷ひとつ越えただけでそれぞれに違う「微気候」と呼ばれる複雑な自然環境を作り出しており、今も個性的な高級コーヒー生産地として世界的に名を馳せています。
現在当店ではコスタリカのディベルサ農園で栽培された希少種8銘柄を取り扱っていることもあり、コスタリカコーヒーのカッピングには少し気負うところもあったのですが、出てきた銘柄はカツーラ2種とムンドノーボ、そしてビジャサルチと少し拍子抜けしたような一般銘柄でした。
ただし、プレゼンテーターはコスタリカの著名な輸出業者であるエクスクルーシブコーヒーのフランシスコ・メナ氏、また同席された生産者はCOE(カップオブエクセレンス)NO.1のドンマヨさんはじめ、そうそうたる顔ぶれであり、非常にきれいで洗練されたコーヒーを堪能させていただきました。
また、世話役でもあるバッハコーヒーの田口御大(コーヒー業界では超のつく有名人ですね)のはからいもあり、バッハさんで提供されている様々なスイーツを課題材料として、コーヒーとのマリアージュについて参加者共々議論をかさねさせていただきました。
紅茶とスイーツのマリアージュやワインと食事、チーズなどのマリアージュは体系づいたようなものもありますが、残念ながらコーヒーの世界は「なんとなく」というくらいのものしかないのが実情です。
当店としても一般のお客様、業務のお客様を含めてもう少し体系づけたご案内ができればと常々かんがえていたこともありましたので、よいきっかけをいただいたと思っております。

さて、それとは別にワークショップの中でコスタリカコーヒーの方々とお話しをする中でぜひに質問してみたいと思っていたことがあります。
それはコスタリカのトップクラスのコーヒーに度々使われる「ブティックコーヒー」なる表現についてです。
あまり多く使われる言葉ではありませんが、上質なコスタリカコーヒーに出会えば出会うほど耳にする言葉でもあります。
今まで方々に聞いて歩いたのですが、なかなかはっきりとした答えを伺ったことがなく、なぜ「ブティック」なる冠をコスタリカコーヒーだけつけるのだろうか?と疑問に思っておりました。
メナ氏に質問したところ、なんと簡単に解決!
コスタリカのスペシャルティコーヒーの世界では、SCAAの基準でカッピングを行い、85点以上の品質のものを「ブティックコーヒー」、90点以上のコーヒーを「シャンパンコーヒー」と言うようになっているのだそうです。
(この格付けで言えば、現在当店に入荷中のディベルサコーヒーはいずれもブティックおよびシャンパンコーヒーと言っていいと思います!)
これはコスタリカのスペシャルティコーヒーを生産する一部の生産者の中で通用する言葉のようです。
コスタリカではこの10年ほどの間に自らチェリーを栽培し、同時に精製も手掛ける小規模な自己完結型の生産方式(マイクロミルと呼ばれます)が目覚ましい発展を遂げています。
いわばワインの世界のシャトーのような形体とも言えるのですが、この生産方式に呼応するように出来上がったコーヒーにも特別な呼び方を始めたというのが真相のようです。
最上級のものに「シャンパンコーヒー」と名付けるあたり、ワイン業界をお手本にしていることは容易に想像がつきますが、ブティックというのもワイン用語であり、ブティックワインというのは有名なシャトーではないけれど自らが栽培したぶどうで素晴らしいワインの醸造を行うワイナリーのことを言うのだそうです。
(しかし、今回「シャンパンコーヒー」というコスタリカコーヒーの格付けは初めてしりました、通訳に立たれた先生も初耳とのことで、以外と知ってそうでわからないことも多いものだと改めて遠い様々な異国からやってくるコーヒーの奥深さを感じた次第です)
ちなみにコスタリカの上質なコーヒーの代名詞的に使われる言葉として「ハニーコーヒー」という表現がありますが、
これは精製方法に由来するもので、コーヒーチェリーの果肉を除去しパーチメント(生豆の入った固い殻)を取り出す際に果肉をある程度残し、ヌメリの付いた状態で乾燥を行う「パルプド・ナチュラル」というちょっと変わった精製方法のコーヒーに使われます。
この精製方法ではコーヒーが独特の甘い仕上りになるとされ、また果肉の残し方や乾燥させ方でも風味に大きな変化があることから、近年コスタリカのマイクロミルでは積極的に導入されている精製方法です。
(元々パルプドナチュラルは収穫時期に雨が少なく、水資源に恵まれずチェリーの水洗精製ができないブラジルの生産地で水洗精製に替わるものとして開発された精製方法ですが、独特の風味を作り出すことから、中米など水資源の豊富な地域でも大きく注目されだしています)
精製方法の詳細については下記ご参照ください。
http://gettekian.seesaa.net/article/97562705.html


2009年09月04日

秘密のコーヒーガーデン「ディベルサ」!!!

日々の慌しさにかまけて、気がつけば4ヶ月以上もブログの更新をしておりませんでしたヾ(_ _*)ハンセイ・・・
少しづつですが、またブログ更新していきたいと思います(・∀・)ノ
懲りずにまたみてください。

さて、久しぶりの更新で今回取り上げたのは、秘密のコーヒー農園「ディベルサ」についてです。
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当店は元々日本茶の専門店ですが、20年ちょっと前から「日本茶と同様のレベルで繊細な味わいを楽しむコーヒー」という切り口でコーヒーの自家焙煎を行ってきました。
特にこの10年くらいの間にコーヒーを取り巻く世界的な環境は激変し、より洗練された上質なコーヒーを選ぶ、楽しむことができるようになってきています。

コーヒーと言えば、ブレンドというのが今でも一番幅を利かせていますが、そのブレンドを作るいわゆるストレートコーヒーでは、ブラジルとかコロンビアとか国名で選ぶのが一般的、せいぜいキリマンジャロとかブルマンなど特定のブランドものが知られているというのが長く日本のコーヒー業界の常でした。
ただ美味しいブレンドコーヒーなら文句はありませんが、世の中に溢れてるブレンドコーヒーにはなんだかあまり感心できないものが少なくありません。
考えてみれば当たり前ですが、美味しいブレンドコーヒーの大前提には美味しいストレートコーヒーがあるはずです。
「美味しくないストレートコーヒーをブレンドテクニックで美味しいコーヒーに変える!」
なんとなくこんなことが可能なんではないか?と思ってらっしゃる方が多いように思いますが、そんなうまい話しは実際にはありません。
ブレンドという作業を必要以上にすごい職人技、神業のようなものとして宣伝される業者さんなども昔から多くてそんなイメージが定着してしまっているのかもしれませんが、実際にはそんな魔法のようなものはないんです。
美味しいブレンドコーヒーの裏には必ずそれぞれの個性が際立っている素晴らしいストレートコーヒーが存在しています。
そんな素晴らしいストレートコーヒーを求めようとすれば、お米でもワインでもあらゆる農産物がそうであるように、より限られた区画までさかのぼって探す必要があります。つまり、国名などという大雑把なくくりではなく、地域・農園・品種・精製方法などこまかな情報のわかるコーヒーが必須ということになります。
この10年ほどの間にコーヒー業界に起きた最大のことは、このより細かな農園単位のようなコーヒーの買い付けが私共のような小さなロースターにも可能になったことだと思います。
そしてこのような流れは少しづつですがおおきなうねりとしてコーヒー業界を今後も動かしていくはずです。
単純なブレンド信奉ではなく、ワインの世界のように今後はますます個々のキャラクターが明確な、産地、農園、品種、精製方法などによって仕切られたシングルオリジン(ストレートコーヒー)が一般的になっていくのだろうと思います。

さて、ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、
そんなコーヒー業界の大きな流れの中で必然と言えば必然として登場したのが今回ご紹介するコスタリカのディベルサ農園です。
ディベルサ農園はコスタリカとパナマの国境沿いに広がる世界自然遺産、ラ・アミスター国立公園に寄り添うように作られた小さな農園です。
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(ラ・アミスター国立公園は中南米最大規模を誇る原生林の森で、マヤ・アステカの時代から神の鳥として崇められてきたケツァールや空飛ぶ宝石と呼ばれるモルフォ蝶、世界一小さな鳥ハチドリなど多くの貴重な動植物の宝庫とされています。ちなみにケツァールは手塚治先生の「火の鳥」のモデルと言われています。アステカ時代から農耕神ケツァルコトルの化身とされ、その羽毛は王様と最高神官にのみゆるされるものだったそうです)

ゴンザロとリカルドのフェルナンデス兄弟によって数年前に開設されたまだ新しい農園ですが、この農園は世界でも非常に特異でユニークな農園なんです。
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(農園主のゴンザロ夫妻とリカルド)
フェルナンデス兄弟のうちゴンザロは腕利きのコーヒーハンター(世界中のコーヒー産地を渡り歩き、良いコーヒーを探し出してくる買付請負人)でもあり、彼が世界中で探し出してきた超レアな品種だけをこのディベルサ農園で栽培しているんです。

現在世界中の農園で栽培されているコーヒーにはある一定のくくりのようなものがあります。それは「生産性が高く、商業流通に向いている」というもの。特にこの40年ほどの間にコーヒー業界はより生産性の高い品種、効率の良い栽培方法などが確立し、それ以外の多くの品種などが排除されるという歴史でもありました。
でもそんな中で排除されていったコーヒーの中にはとても香味に優れたものや独特のキャラクターを持ったとてもユニークなものがたくさんあったんです。
ゴンザロが彼のライフワークとして集めてきたコーヒーはそんなものばかりです。ディベルサとはラテン語で「多様性」という意味。ある種高い生産性を追い求めて画一的な方向に向きすぎていたコーヒー業界のアンチテーゼのような存在と言ったら言いすぎでしょうか・・・。

コーヒーはもちろん農産物です。様々な多様性を持つということはその本来の姿です。そんなコーヒー本来の多様性を求め、今ではほとんど見ることのできなくなってしまったような様々なコーヒー達を専門で扱う農園がこのディベルサ農園なんです。

当店では便宜上「農園」とご紹介していますが、オーナーであるフェルナンデス兄弟は「農園ではなくてコーヒーガーデンです」と強調します。
生産性を追求する大規模な農園とは正反対の存在として、一つ一つのコーヒー、品種を大事に見守るように栽培している箱庭のようなポジションを最も大切にされているとのことです!

農園の存在するコスタリカは日本ではコーヒー生産国としてはあまり馴染みが深くないかもしれませんが、1940〜70年頃までは世界でもっとも品質の高いコーヒーを生産する国として知られていました。そんな時代にコスタリカで生産されていた伝説の品種モンテクリストやビジャサルチ。その他にもエチオピア原産でここ数年パナマなど一部で大変な反響を呼び起こしているゲイシャ、同じくエチオピア原産のディジャアルゲ、赤紫の葉をつけるプープルアセンス、ブルボン島起源のポァントゥブルボン、ムルタなどなど、それぞれの品種が互いに交雑などがおこならいよう明確に区切られた畑で栽培されています。
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(区画ごとに品種が栽培され、区画ごとに交雑がおきないよう境界には他のフルーツや様々な木々が植えられています)

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また、それぞれのコーヒーに最適な精製方法を模索しながら、天日乾燥のみのナチュラル、水洗処理のフルウォッシュ、果肉除去後ヌメリのついた状態で天日乾燥を行うパルプドナチュラルなどそれぞれ丁寧な精製方法を行っています。

産地・農園・品種・精製方法などが明確なコーヒーが求められてきているという時代のニーズに合わせるように生まれた「ディベルサ コーヒーガーデン」、この存在はワインの世界で言えばシャトーやグランクリュといった位置づけになります。
当店では以前からご紹介しているコーヒーの中にも数多くゴンザロのお世話になったものがありましたが、そんなお付き合いもあって今年は初出荷となったモンテクリスト、ビジャサルチ、ディジャアルゲ(2系統)、プープルアセンス、ムルタ、ルメスーダン、エレクタの7品種8銘柄が入荷します!
いずれもまず世界中どこにいってもまずお目にかかることの難しいものばかりです!
コーヒーの多様性とそのユニークさを感じるのにこれほどのラインナップはなかなかありません!

お買い物はブログ連動HP春木屋「月滴庵」へ!

2009年04月26日

コーヒーを国で選ぶべきか・・・

当店では国名、産地、農園、品種、精製方法などを明記したコーヒーだけをご案内しています。
店頭に並ぶ1種類の豆を選ぶまでには平均して10数種類のサンプル生豆をテスト焙煎し、実際にその味わいを試す中で決めるようにしています。
そんな風にして年間数百種類にも及ぶ様々な国、地域のコーヒーをチェックしていると、同じ国でも本当に様々な個性のコーヒーがあるということに気付かされます。

店頭でお客様とお話しをする中で、「ブラジルが好きです」とか「コロンビアはあんまり・・・」という反応をよくいただきます。もちろん国によって味わいの大きな系統があるのは事実ですし、一般的に販売されているコーヒーの多くが「ブラジル・サントス」とか「コロンビア・スプレモ」などほとんど国単位での表記しかないものが多く致し方ないというのもわかる気がします。
でも、世界でもトップクラスの繊細な舌を持っているはずの日本人として、また世界有数のコーヒー消費国としても、このようなコーヒーの捉え方はとても残念に思えてなりません。

コーヒー選びの例えとして、よく「お米」を引き合いに出すのですが、まずほとんどの日本人の方は「日本米下さい」というようなお米の買い方はしないはずです。
新潟産とか秋田産などの産地、コシヒカリとかササニシキなどの品種、ちょっとこだわる方ならより詳しい生産地域や生産者情報、精米した日付などもチェックされるのではないでしょうか?
このような細分化された商品情報というのは、高い品質を求める上で必要不可欠のものです。お米を買う場合それぞれの産地・銘柄自体に特別こだわるというのではなくても、そのような商品情報があれば大きな安心感につながるのではないでしょうか?いつ、どこで、誰が、どのように作ったものなのか?このようなことが明確になって初めて品質の向上も図られるのではないかと思うのです。
身近なお米の場合、それが当たり前のことになっていますが、コーヒーの世界ではまだまだそんな単純なことが通用していません・・・。
ブラジル・サントスというのはブラジル、サントス港から出荷された輸出用規格のコーヒーという意味です。NO.2などの表記があればもう少し詳しく、輸出用規格の中でのランクなどがわかりますが、いずれにしてもブラジル中から集められた豆であり、こまかな生産者情報などは知る術もありません。「ブラジル・サントス」というコーヒーは「ストレートコーヒー」の一つとして飲まれるのかもしれませんが、実際にはブラジル中のコーヒーが生豆段階でブレンドされた「ブレンドコーヒー」なんです。

「ブラジル・サントス」のような国中の豆を”ブレンド”した”ストレートコーヒー”には一定の特徴が現れますので、「ブラジルのコーヒーは好き」「コロンビアのコーヒーは嫌い」というような「国別」の好き嫌いが出るのも分かります。
でも本来ブラジルと一言で言っても、国土面積は日本の実に約25倍、コーヒー農家もざっと20万軒以上あります。それぞれの地域で風味は違いますし、農園や品種、栽培・精製環境による違いはさらに大きなものです。
以前コラムでご紹介したように、コーヒーの世界的な流通構造の問題などもあり「国単位」のようなコーヒー豆の流通が主流となってきましたが(詳しくは「スペシャルティコーヒーは何故生まれたのか?@AB」をご参照ください)、この10年ほどの間に状況は大きく変化しています。産地・農園・品種などより細分化され、個性の明確な素晴らしいコーヒーの流通がどんどん増えてきているんです。

それぞれの農園が手塩にかけて育てたコーヒー豆。その一つ一つにはそのコーヒー独自の個性があります。
その一つ一つの個性を楽しむ、評価することこそが農産物としてのコーヒーの最大の魅力になると私どもでは確信していますし、また生産者への礼儀でもあると思うのです。
それは同じ農産物である、お米も、お茶も、ぶどうから作られるワインもみな同じなのではないでしょうか?。
単純にブラジルのコーヒーが好きとか嫌い、ではなく「今年のブラジルのレクレイオ農園は良かったね〜」というお話しをどんどんお客様とできるようになれたらどんなに素敵でしょう!?
たかがコーヒーに、そんなに入れ込んでどうする!?とお叱りの声をいただいてしまうかもしれませんが、基本的なスタンスをこのようなポイントで抑えておけば、何気なく普段飲むコーヒーだって、いつも特別美味しい「最高の一杯」にすることができるのではないかな〜と思うのです。
お客様にお話しする以上に、コーヒーを扱う業者の端くれとして特に自らに自問自答する今日このごろです・・・。

2009年04月24日

コーヒーの精製方法について・・・

一見さくらんぼの実のようなコーヒーチェリーがコーヒー豆になるには「精製」とよばれる工程が必要になります。

コーヒーチェリーの果肉を取るとパーチメントという硬いカラの状態になり、さらにその中にいわゆる生豆という部分が入っています。この生豆を焼き上げたものが店頭に並んでいるコーヒー豆です。
果肉を取り除く作業を「ウェットミル」、パーチメントのカラを取り除く作業を「ドライミル」(脱穀ですね)なんていいますが、精製作業の中でとても重要なのはウェットミルの部分です。

ウェットミルの精製方法もひとつだけではなく、さまざまな方法があって、コーヒーの香味に大きな影響を与えたりします。
このコーヒーの精製方法についてもちょこちょことご案内しておりますが、今回は特集としてご案内したいと思います。

コーヒーの精製方法は大きくわけて、
★ナチュラル精製
★フルウォッシュド精製
★パルプドナチュラル精製
の3つに分けられます。

★ナチュラル精製とは、
摘み取ったコーヒーチェリーをそのまま天日にさらし、果肉がカラカラになるまで乾燥させる方法です。
最も単純で原始的な精製方法ですが、コクが強い仕上がりになるとされています。
乾燥に時間がかかりますので収穫時期に雨の少ないことが必要、現在では主にブラジルやイエメン、エチオピアなどで行われています。
欠点豆(未熟豆や虫食い豆)や不純物(石や小枝など)が混入してしまう比率が他の精製方法よりも高く、上質な仕上がりにするにはハンドピック(人の手による異物除去作業)が欠かせません。
欠点豆の混入度合いが高かったり乾燥工程がスムーズでないといやな発酵匂を伴ってしまう場合があります。
より上質な仕上がりのために、乾燥前に水に漬け欠点豆や石などを除去したり(多くの欠点豆や小枝などは水に浮きます。また小石なども比重の関係で分離できます)、単純に土の上に広げるのではなくコンクリート製の乾燥場にしたり、アフリカンベッドと呼ばれる台座の上で風通しを良くした状態での乾燥を行ったりする場合もあります。ブラジルなどの先進的な農園では最新のコンピューターやレーザー技術を応用した欠点豆の自動除去装置を備えているところもあります。

★フルウォッシュド精製とは、
収穫したコーヒーチェリーの果肉を除去し、カラ(パーチメント)についたヌメリを取り除くために水槽に一晩程度漬けて発酵させ、再度水洗除去を行いきれいになったパーチメントに乾燥をかけるというものです。
大量の水と専用の設備が必要ですが、水洗いの時点で欠点豆や異物の混入を防ぐことが可能で、香味としてはすっきりときれいな香味になるとされています。豆本来の香味を忠実に表現できる方法とされていて、現在世界的に主流となっている精製方法です。
除去した果肉や発酵槽から出る汚水などは周囲の環境に悪影響を及ぼす場合があるため、オーガニック団体などが中心となり、その適切な処理をすることが求められてきています。

★パルプド・ナチュラル精製とは、
ナチュラル精製とフルウォッシュド精製の中間的な精製方法で、セミウォッシュド精製とも呼ばれます。
収穫されたコーヒーチェリーの果肉を除去するところまではフルウォッシュド精製とほぼ同じですが、その後ヌメリのついた状態のパーチメントをそのまま乾燥にかける精製方式です。
大規模な設備や大量の水を必要としないため小規模農園でも可能で、水資源の乏しい地域でフルウォッシュド精製が不可能な地域でも、収穫時期に雨が多くナチュラル精製が不可能な地域でも可能な精製方法です。
香味は独特な甘みの強いアロマになるとされていて、現在非常に注目されている精製方法でもあります。
ブラジルを始め、中米各国などの先進的な農園ではかなり積極的に取り入れられています。ちなみにジャマイカのブルマンやハワイのコナコーヒーの多くは現在このパルプドナチュラル精製です。
果肉に残すヌメリの量によって仕上がりの香味に劇的な変化が起きたりする場合も多く、特にコスタリカの小規模農園などでは積極的にこのヌメリ量の調整による香味の調整に取り組んでいます。これらのコーヒーは「ハニーコーヒー」「ブティックコーヒー」などと言われ、独特の甘みを持ったコーヒーとして世界的に大きな注目を集めています。

▲スマトラ式精製について、
パルプドナチュラル精製の一つとして「スマトラ式」と呼ばれる精製方法があります。マンデリンで有名なインドネシアスマトラ島で主に行われている特殊な精製方法で、マンデリンの独特な香味はコーヒーの品種や土壌によるだけでなく、この特殊な精製方法によって作られている部分が強いと言えます。
基本的にパルプドナチュラル精製と同じなのですが、通常はナチュラルでもフルウォッシュドでもパルプドナチュラルでもパーチメントの状態で生豆の水分量10数パーセントになるまで乾燥させてからドライミル(脱穀)を行います。しかし、このスマトラ式の場合は果肉を除去後、生豆の水分量が50%ほどもある状態で脱穀をしてしまいます。脱穀後にさらに乾燥をかけ、最終的に生豆の水分量が10数%になってから輸出されるというわけです。
世界的にみても普通はパーチメントの状態で乾燥させますが、スマトラ式だけはパーチメントを取り除いて生豆にした状態で本格的な乾燥を行っています。このためこの方式で作られているマンデリンの生豆は他の地域生豆と比べて明らかに緑色が濃く、脱穀時にはまだ柔らかいため少し潰れたような形状になっています。
頻繁にスコールの降る地域でナチュラル精製はそもそも不可、小規模農家が大半でインフラも不十分なため、フルウォッシュド精製も根付かなかったためこのような精製方式が一般的になったようです。
独特なマンデリンの風味をつく出してくれる素晴らしい精製方式ではありますが、水分量の高い状態でパーチメントから生豆を取り出してしまうということは、生豆の品質保持に大きな問題を起こしてしまう可能性も高くなってしまいます。スマトラ島でマンデリンとして出荷される高品質なアラビカ種豆の割合は全体の5%程度と言われていますが(大半はインスタントコーヒーなどにも用いられる低規格のロブスタ種が占めています)、その中でも上質なマンデリンを見つけるのはとても難しいとされています。それはこの特殊な精製方式にも大きく関係しているんです。


それぞれの精製方式によって同じ農園、同じ品種でも味わいにはかなり違いが出たりします。
また、今回ご紹介した各種精製方法も地域や農園、処理施設ごとに様々な違い工夫があり、それぞれの特徴を持った精製方式が行われています。
コーヒーをお買い求めになる際にはこんな精製方式についてもチェックしてみるとまた面白いと思いますよ!

2009年01月23日

スペシャルティコーヒーは何故生まれたのかB

★コーヒー流通を支配する巨大国際企業★

フィリップモリス(現アナトリアグループ)、P&G(プロクターアンドギャンブル)、ネスレ。
この名前を聞いて皆さんどのように思われますでしょうか?
ネスレ社はインスタントコーヒーの世界的な企業としてコーヒー関連の企業であることはイメージがつくかもしれませんが、実はこの3社は世界のコーヒー流通の非常に大きな部分を占めるコーヒー業界の巨人なんです。
マルボロなどで有名なタバコ会社のフィリップモリスや洗剤などで有名なP&Gがコーヒー?と思われるかもしれませんが、いずれも世界中に生産・販売網を張り巡らしている国際複合企業で、その事業の重要な一部門としてコーヒー部門を持っています。そしていずれの企業も米国が主戦場であって、多国籍企業とは言え米国を中心とした多国籍企業と言い換えてもいいかもしれません。(ネスレ社はスイスに本社を置く企業ですが、主力商品のネスカフェは米軍の飲料として採用され米軍の世界派遣と共に世界中に普及していったという経緯があります。つまり、ネスレ・ネスカフェと米国・米軍とは切っても切れない関係にあります)

コーヒーの消費において米国という国の存在は圧倒的に大きな存在です。
米国におけるコーヒーの消費量は、第二次世界大戦後には世界の生産量の実に60%近くに達していました。
コーヒー生産国にとって、コーヒーの流通とは米国のことに他ならないものであったわけです。
そんな米国では昔からM&Aなどによって巨大なコーヒーの流通企業がありました。
日本でもなじみのあるMJBなどもそうですし、日本ではあまりきいたことがないかもしれませんが、
フォルジャー、マックスウェルなど全米に名を轟かせた巨大なコーヒーカンパニーが存在しました。
それらも時代の移り代わりの中で合従連合を繰り返し、現在では冒頭でご紹介したフィリップモリスやP&G、ネスレなどが束ねているという状況になっています。

日本ではアメリカのコーヒーは薄くて香りもコクも弱い不味い飲み物=「アメリカンコーヒー」というイメージが今も強いように思います。
この10数年ほどの間にスターバックスなどの新興勢力の登場やスペシャルティコーヒーの盛り上がりなどもあり、状況はかなり変わりつつありますが、実際に長らくアメリカの大半のコーヒーは「ただ黒い色をした味も香りもない濁った液体」であった時代が続きました。
それは、この資本主義の申し子のような巨大流通企業の影響が直接的に関わっていたと言えます。

1962年、紆余曲折を経て国際的なコーヒーの価格カルテルシステムICAの体制が発足すると、
ブラジルやコロンビアなどの生産国と米国などの消費国の関係はより密接になっていきます。
消費国と言っても事実上取引相手は大手コーヒー流通業者です。前回のコラムでもご紹介したように、安定的に均一の商品を供給するため、生産国では病害虫に強い新品種などへの植え替えなどが起きていきましたが、それは多くの場合取引先である米国の巨大企業の求めに応じて行なっていたという側面が強いものであったようです。
そのような新品種の大半はは病害虫に強く収穫量も多いのですが、香味はあまりよくない場合がほとんどでした。
でも当時の米国の流通業界の共通した認識は「味より価格」であったことは間違いありません。
大手企業はさらなるシェア拡大を目指し、大規模な広告戦略と価格競争に明け暮れていきます。
スーパーでは熾烈な価格競争が繰り広げられ、レストランでも1杯5セント(インフレ率を考慮しても現在の価格で約20〜30円)のコーヒーが飛び交っていたそうです。
最大の顧客であった米国が品質よりも価格を重視し、生産国もそれに同調していったのが、第二次大戦後から1990年くらいまでの一貫した流れであったと思います。

さらにそれだけでなく、ネスレ社などは積極的な新生産地の開拓を行なっていきます。
現在ベトナムはブラジルに次ぐ世界第二のコーヒー生産国となっていますが、これはネスレ社による強力なバックアップがあったといわれています。ベトナムで生産されるコーヒーのほぼ100%がインスタントコーヒーや缶コーヒー、加工品などに利用されるロブスタ種で、ネスレ社は主力商品ネスカフェの工場もベトナムに持っています。
コーヒー生産の新興国ではコーヒーの価格カルテルであったICAに所属していないため、高値で安定している世界のコーヒー流通価格に対して、それらに関係なく安い価格でコーヒーを販売することが可能でした。
ベトナムなどの新興国では人件費も安く、またネスレなどの大資本のバックアップによって最初から高度な機械化なども取り入れ非常に安価な生産価格が実現していましたから、作れば作るほどいくらでも売ることが可能だったわけです。

1980年前後から急速にベトナム、インド、ウガンダ、コートジボアールなどICAに属さない生産国での生産量が飛躍的に増えていきますが、その影には必ずといっていいほど国際流通企業の姿が見え隠れしています。
一方ではICA体制の生産国に品種改良などによって安く大量に商品供給をさせ、またその一方でその体制外の国での増産により、世界的なコーヒー流通価格の地盤沈下を生み出すようなことをやっていたわけです。

この結果、ICAの存在自体が意味をなさなくなり、ICAは1989年に事実上機能停止状態となります。
1990年台にはブラジルなどの豊作やグァテマラ、エチオピア、ケニアなどの増産も重なり、コーヒーの国際価格は過去にないほど下がり始めます。さらに、ベトナムが飛躍的に生産量を伸ばした1990年代後半からはまさに危機的水準、いわゆるコーヒー危機に陥いってしまいます。
2001年にはコーヒー流通1000年の歴史の中で最安値を付けたといわれるほどの低価格となり、世界中のコーヒー農園が放棄され、多くの農園労働者が職を失う事態となりました。

さて、そんなめちゃくちゃとも思えるような中でも、良いコーヒーを作る生産者も、それを仕入れて売る販売者も極々少数ですが残っていました。
カリフォルニアで1966年に創業したピーツ・コーヒー&ティーはその総本山と呼ばれている自家焙煎店ですが、ピーツと密接に関わり、影響を受けて生まれたのがかのスターバックス社です。
スターバックス社に関しては賛否両論ありますが、米国、そして世界にスペシャルティコーヒーの存在を知らしめ、広げていった機関車の役割を担ったことは事実だと思います。
かれら、いわゆるシアトル系カフェと呼ばれるコーヒー事業者の媒介によって、上質なコーヒーを求め長い間抑圧されていた生産者と消費者が爆発的な勢いで結びついていくようになります。
現在悪口を言われ続けたアメリカのコーヒーは、日本人のイメージするような薄いアメリカンコーヒーはほとんど見ることがなくなりました。
スペシャルティコーヒーの米国における消費量は伸び続け、消費量全体の20%以上を占めるようになっており(日本では5%にも満たないと言われています)、販売金額においては全体の半分以上となっているようです。

コーヒー業界をズタズタにしたのもアメリカ、でも再生の種を蒔いたのもアメリカ。
なんとも因果な話しですが、アメリカという国の傲慢さと懐の深さを同時に感じさせる話しだと思いませんか?

現在、世界的な潮流となっているスペシャルティコーヒーの動きを生み出す裏にはこのような世界的なコーヒー流通を牛耳ってきた巨大企業の存在が見逃せません。これら企業の傲慢ともいえる活動の中でうっ積したパワーが一気に噴き出したのがこの10年ほどの流れだったといってもいいかもしれません。
それは奇しくも、コーヒー貿易1000年の歴史の中でコーヒーが最も危機に立たされた時期に重なります。
危機というものは、何か新しいものを生み出す元にもなるのだと思わされます。
日本も現在未曾有の経済危機と叫ばれていますが、考えてみれば、こんな時こそ新たなチャレンジをするのにいい時期なのかもしれませんね。

というわけで、3回に分けて「スペシャルティコーヒーは何故生まれてきたのか?」というコラムを書かせていただきました。
経済、貿易は生き物でこれからもコーヒー流通は様々な形に変化していくのかもしれません。
でもいつの日か、「素晴らしい環境で育った素晴らしいコーヒーを楽しむ、そして消費者も生産者も中間業者も皆ハッピーになれる」そんなコーヒー業界になってほしものです。

2008年12月09日

スペシャルティコーヒーは何故生まれたのか?A

★生産者を苦しめ続けてきた「コーヒーサイクル」★

 コーヒーという農産物は非常にデリケートなものです。良いものを収穫するためには熱帯〜亜熱帯の高地で霧(キリ)の発生しやすい寒暖差のある場所が必要です。でも霜(シモ)やハリケーンなどの気候変動にはとても弱く、収穫前に被害を受け全滅なんてことも珍しくありません。特に伝統的な高品質品種、ティピカ種やブルボン種などはそうした影響を強く受けてしまいます。
 一端ブラジルやコロンビアなどの一大生産地でこのようなことがおきると、一夜にしてコーヒーの受給バランスは崩れ、コーヒーの国際価格が跳ね上がることになります。
 この自然被害などによる価格高騰がおこると、当然ですが、多くの生産者はより収入を増やせると考え増産へと動きます。
 コーヒーは種をまいてから、およそ4年後に収穫が見込めるのですが、結果として4年後には収穫量が一気に急増することになります。すると再び逆の意味で需給バランスは崩れ、一転国際価格は大暴落をしてしまいます。
 このような価格変動のことを「コーヒーサイクル」と呼びますが、コーヒーが国際商品となった数百年前からコーヒー業界、特に生産者はこの価格の乱高下に悩まされ続けてきました。
 このような価格のブレをなんとか抑え、安定的な外貨獲得を行いたいと考える生産国ではしばしば輸出量の強制的な調整などを行いましたが(実際に1930年代のブラジルでは年間生産量の実に3分の1、毎年約50万トンのコーヒー生豆が海などに捨てられたこともありました)一国だけの調整ではなかなか期待するだけの効果は得られません。そこで様々な紆余曲折を経て、1962年ブラジル・コロンビアなどの生産国とアメリカを中心とする消費国の多くが参加して、コーヒーの流通量調整を行う国際的な組織、ICA(国際コーヒー協定)が作られました。
 ICAは事実上の国際的なコーヒーカルテルで、各生産国で生産量が割り当てられ、消費国への配給のスタイルが取られるようになりました。
 国際的な需給調整を行うためにはできるだけ安定、平準化されたコーヒーの供給が有利となります。際立った個性などはむしろ扱いづらいものとなるため、品質よりも、より生産性が重視されるようになっていきます。このようなことから、病害虫、気候耐性の強い生産効率の良い品種改良された品種などが各国で多く栽培されるようになっていきました。
(これがコーヒーの味わいを大きく損なう原因の一つとなっていきます。実際にコロンビアでは1960年代前半には伝統的なティピカ種が大半を占めていましたが1980年代には悪名高いハイブリッド改良種バリエダコロンビア〜病害虫に強く生産性は極めて高いが、香味は悪い〜が60%以上を占めるようになっています。これによってかつてコロンビアマイルドと呼ばれ高品質コーヒーの代名詞と言われたコロンビアコーヒーも大きくその品質を低下させることとなってしまいました)

 ほぼ定期的とも言えるようにやってくるコーヒーサイクルという価格の大きな変動。それに翻弄される生産者、生産国。かつてブラジルやコロンビアなどにとってコーヒーは唯一最大の輸出品でしたので、コーヒーの価格の乱高下はまさに国家存亡の問題と言っても過言ではなかったようです。
 そんな中で苦渋の選択として編み出されたのがコーヒー流通の国際カルテル「ICA」です。しかし、そのICAによるコーヒー流通の管理は結果として、コーヒーの品質の低下を作り出してしまいました。それは社会主義国家において生産性や品質が上がらないことと似ています。自由な競争なくして品質の向上はやはり無理だったのでしょう。
 「昔のコーヒーは良かった・・・」コーヒーに限らず、昔を懐かしむ感覚は珍しくありませんが、多分に過ぎ去った過去に対するノスタルジーのような情緒的な部分が多いようにも思われます。しかしコーヒーの場合、本当に「昔のコーヒーは良かった」という言葉がそのまま当てはまっていました。1960年代から90年代まで、コーヒーの世界的な品質は劣化の一途を辿っていたわけです。
 そんな中でも潜在的により良いものを作りたいの願う生産者とより良いものを飲みたいと望む消費者はいたわけで、彼らの行き場のないエネルギーがマグマのように噴き出して起きたのが、スペシャルティコーヒーの大きなうねりだった、というわけです。

 次回は、スペシャルティコーヒーが生まれるもう一つの影の存在、世界的な流通コングロマリット、巨大企業の存在についてご紹介したいと思います。

2008年12月05日

スペシャルティコーヒーは何故生まれたのか?@

 日本はアメリカ、ドイツに次ぐ世界第3位のコーヒー輸入国です。一人当たりのコーヒー消費量は約340杯/年。緑茶や紅茶、清涼飲料水などを含め、実は日本人が最もたくさん飲む非アルコール飲料になっています。
 数字だけで見ると紛れもないコーヒー大国ですが、日本は伝統的にインスタントコーヒーや缶コーヒーなどの加工用として使われる、下位品種のロブスタ種やディスカウントレベルのコーヒーが圧倒的に多く輸入されてきました。総輸入量は世界3位ですが、必ずしもトップレベルのコーヒーが多かったわけではなく、一人当たりの消費量でも実は10位にも入りません。(ちなみに一人当たりの消費量で上位はヨーロッパ、特に北欧地域が断然多く、1位のフィンランド、約1000杯/年を筆頭にノルウェー、デンマークなどでは700〜1000杯/年近くが消費されています。ちなみに世界最大の消費国アメリカは約400杯強/年ですが、近年劇的に高品質なコーヒーの割合を高めています)
 当店で専門的に扱っているスペシャルティコーヒーと呼ばれる世界トップクラスのコーヒー豆が日本に多く入ってくるようになったのは、この10年ほどのことです。ブラジルなど地球の裏側のような遠い産地という物理的な問題もあり、これまでなかなか分かりづらかった生産地や生産者の情報も最近ではインターネットなどの普及も手伝い、比較的簡単に入手することができるようになってきています。

 さてこの「スペシャルティコーヒー」という言葉、今ではそんなに珍しい言葉ではなくなってきています。
 スペシャルティコーヒーという言葉、その概念は1980年前後から主にアメリカを中心に広がってきた考え方です。元々アメリカ、クヌッセンコーヒーのエルナ・クヌッセンさんが提唱した「より特定された気象、地理条件が個性的で独特な風味を作りだす=スペシャルティコーヒー」という考え方に小さな販売業者、生産者が呼応する形でこの分野のコーヒーがスタートしています。ただ、実際にスペシャルティコーヒーが世界的なムーブメントになるのは2000年前後、20世紀の終わりくらいから、急速にその存在感を増してきます。
 世界的に高まる食文化の成熟、世界的な情報、交通の高度化、なにより、より美味しいものを求める消費者の欲求、それらがスペシャルティコーヒーというカテゴリーを後押ししましたが、実はスペシャルティコーヒーが生まれる背景にはそれだけでない、コーヒーという農産物がかかえる構造的な問題と、アメリカを中心に世界のコーヒー流通の多くを占める国際的なコーヒー流通企業などの存在が大きく影響を与えています。
 今回から、何回かに分けてこのスペシャルティコーヒーのうまれてきた背景と、そこに潜むコーヒー業界の長年抱え続けてきた問題について少しご紹介したいと思います。

2008年10月26日

ホットコーヒーは心も暖める!?

米国、エール大学のバーグ教授らの研究によると、一杯のコーヒーなど温かい飲み物によって身体的に暖かさを感じると、他人に対して寛大になったり、より暖かな人になれる!という研究結果を発表したそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081026-00000231-reu-int

確かに暖かなコーヒーを飲むと、ほっとして、心まで温かくなるような気がしますよね。美味しいコーヒーならなおさらです。
この研究結果はコーヒーに限った話しではなく、暖かなものを飲んだり、持ったりすることで、心にも良い影響が及ぶというものなんだそうです。

暖かな地方の人はおおらかで、温かい人が多いって良くいいますが、それはやっぱり温暖な気候のお陰なのかもしれませんね。
私の極近い人にも沖縄出身のそりゃーもう太陽のように明るくほがらかな人(悪く言えばの〜天気な人・・・)がおりますです。わーい(嬉しい顔)
じゃあ、逆に北の国の人々は冷たい人ばかりか?というと、う〜〜ん、私の周りで考えると、南に劣らず北国の人も温かくていい人ばっかりのような気がします。
あっそうか!北国ではいろんな鍋をはじめ暖かな食べ物や暖炉や囲炉裏なんて物理的に体とそれから「心」を暖めるアイテムがあふれているんですよね!
なるほど、なるほど、世の中なかなかうまくできてるものです。

2008年10月02日

マルケニッヒK-501やっと到着!

K501.jpg
長年店頭で活躍してくれたミルがだいぶ老朽化していたため、もう半年も前からミルのリニューアルを考えておりました。
国内メーカーから海外の様々なメーカーまで、色々と思案した中で、
ドイツ、マルケニッヒ社のK-501という業務用ミルを購入いたしました。
ドイツからの取寄せに3ヶ月、電気工事なども必要でなんだかんだで検討を初めてから半年以上経ってしまいました・・・。
業務用の高性能コーヒーミルというのは一般の方が聞いたらちょっとびっくりされるほど高額!(T▽T)!なんですよ。
ミルに限らず業務用機器は高額なものが多く、耐久性など考えれば致し方ないのかもしれませんが、毎回ビビッてしまいます・・・。
でもきっとまたさらにお客様にも喜んでいただけるんじゃないかと、やはり新しいマシーンが来るとちょっとウキウキしてしまいますね!

コーヒーはできれば豆で購入されることがベストですが、粉にする場合も出来うる限りベストの状態でお届けできるよう、今後ともがんばっていきたいと思います!!

2008年10月01日

コーヒーの日!

10月1日、今日は実はコーヒーの日です。
コーヒー王国、ブラジルでは大体9月一杯くらいでコーヒーチェリーの収穫が終わります。10月に入いると新たなコーヒー生産の始まりということで、コーヒーの新年度ということになるんです。
こんな由来から今では国際協定などの定めもあり10月1日がコーヒーの日ということになっています。
ブラジルはやっぱりコーヒーにとって大きな存在なんですね。
日本でも10月くらいになるとやっぱりホットコーヒーが断然恋しくなってきますので、由来は違いますが、10月1日はコーヒーの日っていうのもなんとなく分かるような気がしてしまいます。

さて、そんなブラジルからちょっと心配なニュースが届きました。
9月の後半、一大生産地でもある南ミナス地区でヒョウが降ったそうで、死者まででるほどのかなりの被害が出ているようです。
minas1.jpg
一応チェリーの摘み取りは大半が終わっている時期ですが、樹上完熟などのコーヒーには深刻な被害が出ている可能性があります。
当店でもチョコチョコお世話になっている日系の下坂農園さんや、樹上完熟豆のバージングランデ農園など、被害の少ないことを祈るばかりです・・・。
自然には勝てませんが、やはりこれも地球温暖化に伴う異常気象の一端なんでしょうかね・・・。

2008年07月22日

世界のコーヒー需要から・・・

コーヒー動向.jpg
世界のコーヒー需要動向表(クリックすると大きな画像が見られます)

一覧からもわかるように、日本はアメリカ、ドイツ、ブラジルに次いで世界第4位のコーヒー消費国です。
しかし、ここ数年コーヒーの世界的需要に大きな変化が起きています。
新興国での消費がものすごい勢いで伸びています。
中でも資源バブルに沸くロシアの伸びは凄まじく、この10年間で実に3倍以上、数年で日本を追い越しそうです。
それ以外にもベトナム、タイ、インド、インドネシア、ブラジルなどの伸びが大きく、
経済新興国の旺盛な需要は日本のコーヒー業界にも少なからず影響を与えてきています。
経済新興国と言えば、お隣の中国も外せないところですが、伸びているとは言えまだ日本の10分の1程度の需要量でさほど大きなものとはなってきていません。
ロシア以外の伸びの大きい国は自らコーヒーの生産を行なう国でもあり、コーヒーに馴染みが深いことが、需要増に直結しているのかもしれません。
今後、これに加え中国が凄まじい勢いでコーヒーを消費し始めたら・・・、考えただけでちょっと怖くなってしまいます。

10年ほど前、20世紀の終わりごろコーヒーの世界ではベトナムの生産量が一気に世界第二位まで伸び、供給が需要を極端に上回る状態でした。コーヒーの買付価格は暴落し、世界各地の生産者にも大きな影響を与えました。
一転、21世紀に入ると、スタバなどの外資系コーヒーチェーンのバイイングパワーが世界のコーヒー産業を席巻し、各地のコーヒー買付価格は一転高騰し続け、またこの数年は投機筋と見られる資金の流入も増え、価格上昇のピッチを早めています。
コーヒーの生産現場ではこの不安定な価格の乱高下に長年一喜一憂し、悩まされてきています。
コーヒーは実は原油に次ぐ取引価格を誇る国際商品。原油の投機筋による高騰が毎日のようにニュースになっていますが、コーヒーにも似たような現象が起こりつつあるようです。
コーヒーの買付価格がある程度上がることは産地で低賃金にあえぐ農家さんたちにとっては朗報となりますが、日本のような消費国にとっては厳しい状況になってきています。
既に上質なもの、希少価値のあるようなものでは日本企業はいわゆる「買い負け」をしてしまうことが起きています。
当店でも以前から仕入れていたインドネシア産のコピ・ルアックやセントヘレナ島のコーヒーはなかなか入手すること自体が困難になってきてしまっています。
旺盛な消費意欲と資金に後押しをされ、現地で札束をつむような外資勢に太刀打ちできない状況が生まれてきています。
何事にもものには限度があると思うのですが、無分別な価格競争は産地での優良なコーヒー生産にとって悪影響すら及ぼす可能性があります。
日本の輸入商社さんなどは長年に渡って現地農家、生産組合などと上質なコーヒーの栽培、精製に協力し、パートナーシップの確立のもと、商品供給を行なってきました。
しかし、現在そのような長期のパートナーシップをもとにした商取引よりも目の前のより高い買取価格の方が優勢になりつつあります。
さほど上質なものでなくても高い値がつくのであれば、苦労してより良いものを作ろうとする生産者は減り生産基盤自体を破壊してしまいかねません。
長い視点でより良いものの生産とそれに見合う価格の提供を行なうというのが農産物取引の正しい姿だと思うのですが、現在のコーヒー業界はその正反対の方向に進んでいるようにも見えます。
これはバイオ燃料などに関連した穀物価格の高騰などにも似たものがあるように思うのですが、このような流れは一時的には農家の収入増には繋がっても、結局のところはバブルですから、本来の価値を見失って踊ってしまえば、後で大きなシッペ返しを受けてしまうかもしれません。
また、先日お話ししたエチオピアの残留農薬の問題のように、国際的に見てとても厳しい基準を設けていることもコーヒーの輸入には大きな足かせになりつつあります。日本は国産神話のようなものが非常に強く、外国産の農産物に一種のアレルギーのようなものがありますから、やむを得ないのかもしれませんが、コーヒーのようにほぼ100%外国からの輸入に頼っているものの場合、もう少し現状の世界的な枠組みや実際の健康への影響などを考慮して基準を考えてもいいのではないでしょうか・・・。
気が付いたら日本には優良なコーヒーはほとんど入らなくなってしまった・・・、なんてことだけにはならないで欲しいものです。

2008年07月20日

エチオピアモカ、残留農薬問題について

エチオピア、またイエメンのモカから残留農薬が検出されたとの報道がなされ、その後コーヒー業界がにわかにざわついた状態になっています。
いずれも日本では使用が禁止されているもので、農水省が実施するポジティブリスト制度に基づき、新たな輸入に対して非常に厳しいチェックがされるようになっています。

一旦農薬検出がされますと、同地域の同商品(今回の場合はコーヒー生豆)輸入時の検疫は非常に厳しくなりますので、ほぼ全ての輸入業者が輸入自体を見合わせています。(一旦税関に持ち込んだ後、農薬検出がされてしまいますと、輸入業者の責任で全量廃棄処分をしなければならず、多大なリスクとなってしまうためです)
ちょうどエチオピアのニュークロップ(新豆)が続々と入荷してくる時期なのですが、現在、新たな輸入はほとんどストップした状態で、当店でも物理的に在庫がなくなってしまうことと、安全性の面から、先日よりエチオピアモカのご案内を休止しております。

そもそもこの地域は伝統的にあまり農薬に頼らない農業をおこなっている地域であるとされてきましたが、
一転、禁止農薬が検出されたことに業界では大きな驚きを受けました。
また、いずれもコーヒー発祥の地と言われる場所であり、1000年の長きに渡って大切に伝えられてきた伝統農法を舞台にして事件が起きたことも非常に衝撃的でした。

事態を重く見たコーヒー業界では、大手輸入業者などが現地調査などを行っており、全容はまだ解明されておりませんが、現在確認されている情報としては、生豆自体ではなく、どうも生豆を入れていた麻袋に使われた殺虫剤が検出されたのではないか?と言われています。
エチオピアにはコーヒーを入れる麻袋の製造業者がほとんどなく、主にバングラディッシュからの輸入に頼っています。
バングラディシュではマラリアの発生が現在問題となっていて、製造された麻袋にもマラリア対策のための殺虫剤が掛けられていたようです。

これはこれで、やはり問題だと思うのですが、今回の残留農薬問題ではいささかやり切れない気持ちにもなっているんです。
残留農薬は確かに良くない。でも例えばアメリカのコーヒー生豆に関する残留農薬の基準は日本の2〜3倍も許容量が多いんです。アーモンドなどに至っては10倍もの許容量の差があります。
今回の残留農薬問題と輸入制限を行っているのは世界中で日本だけです。
ポジティブリスト制度はより安全な食品を目指すために作られた制度ですが、わずかな農薬検出に対してもなにもかも十派一からげで、結果的に輸入を制限してしまう制度でもあります。
今回輸入制限されてしまっているコーヒーの中には、日本の有機栽培認証制度「JAS」や他の認証を受けたものも多数含まれて居ます。JASで有機栽培と認証されたものまでが残留農薬の危険がある、と国が言うのは明らかにダブルスタンダードで、苦労して栽培した農家のみなさん、それを一所懸命サポートし、買付けた輸入業者の方々、そしてそれを心待ちにしている消費者に対しても不誠実極まりないものと思えてしまいます。
コーヒーの生豆は生のままでは食べません。200度以上の熱処理をしてから初めて食品となります。
残留農薬検査をするのであれば、生豆ではなく焙煎された豆での評価をすべきではないでしょうか?
世界的なコーヒー需要の高まりの中でエチオピアなどのコーヒーは特に人気が高く、買付自体が年々非常に競争の厳しい状況になっています。
そんな中で世界的に見て、日本だけがちょっと滑稽にさえ映ってしまうような基準で輸入制限をするというのは、今後の現地とのパートナーシップなどから見ても非常にマイナスに思えます。
日本には今後上質なエチオピアやイエメンのコーヒーはなかなか入って来なくなるか、もしくはこれまででは考えられないほど高い値段を出さなければならなくなるか、いずれにしても暗澹たる気持ちになってしまいます。

一刻も早い自体の改善とエチオピア、イエメンコーヒーの輸入再開を望みます。
イルガチェフェ、ハラー、マタリ、イスマイリ、ets.のないコーヒーなんて、寂しすぎますよ!!

2008年06月10日

コーヒーの酸味について考える・・・

コーヒーの酸味についてはこれまでも時々お話ししてまいりましたが、久しぶりに「コーヒーの酸味」についてまた考えてみたいと思います。

普段お店で接客していても、インターネットのお客様とお話ししても、また業務用のプロのお客様と打合せをしていても、「酸味のあるコーヒーは嫌い!」という方が非常に多いように感じます。
コーヒーの味わいの好みも国によって様々なのですが、特に日本では酸味のあるコーヒーは敬遠される傾向が強いように思います。

コーヒーは元々コーヒーチェリーというサクランボに良く似たフルーツから生まれます。フルーツから生まれるわけですから、本来フルーティーな酸味があっても不思議ではありません。
実際に上質なコーヒーの多くにはフルーティーな香味が存在しますし、世界各地のどのようなコーヒーコンテストであっても、上質な酸味を伴わないコーヒーは高い評価を得られません。

では、なぜ日本では酸味のあるコーヒーが敬遠されるのでしょうか?

実はこの傾向には、これまで日本のコーヒー業界が抱えてきた様々な問題が凝縮されています。

日本の多くの方が嫌う「酸味」は上質なコーヒーが本来持っている「酸味」ではありません。
コーヒーがフルーツから生まれるということに由来する「酸味」ではなく、
元々の品質が低く、腐った豆や未熟豆などが混入していたり、焙煎から時間が経ちすぎ、コーヒー
が酸化してしまい、結果としていやな「酸味」が出ている場合がほとんどのように思います。
(コーヒーを飲むと胸がやける、というイメージも同じ原因によると思います)

日本はコーヒー消費大国の一つですが、レギュラーコーヒー用の高品質なアラビカ種豆が以前から
そんなにたくさん輸入されてきたわけではありません。日本では歴史的にインスタントコーヒーや
缶コーヒーなどに使われる低規格品のコーヒーが圧倒的に多く流通してきました。
そのようなコーヒーには欠点豆の混入も多く、いやな酸味も出やすいのです。
日本に上質なアラビカ種コーヒーが数多く輸入されてくるようになってきたのは、実はこの10年ほどのことです。

また、コーヒー豆には精油成分がふくまれていて、これは本来コーヒーの香味が濃縮されたアロマオイルのようなものでもあるのですが、焙煎後2週間くらいを境にこの油分が酸化をし、本来持っていた豊かな香味は薄れ、酸化によるいやな酸味などが出てきます。
(この劣化のスピードは保存温度にも大きく左右されますので、それを遅れさせるためにも保存はできるだけ低温の冷蔵庫や冷凍庫をお勧めしています)
真空包装などのパッケージであっても、この風味の消失と劣化から逃れることはできません。(よく賞味期限1年なんていうコーヒーを見かけますが、ちょっと信じがたいです・・・)
販売優先の国内事情の中で、この基本的な部分はほとんど無視されてきたということも、残念ながら事実だと思います。

上質なコーヒーには、様々な香味が一緒に存在しています。決してただ苦い、ただ酸っぱい、ただ渋い、などというような一辺倒な味わいではありません。
それはナッツのような香ばしさであったり、ココアや蜂蜜のような甘さであったり、そして酸味もコーヒーの香味を構成するとても重要な部分です。レモン、オレンジ、リンゴ、ブルーベリーなどのようなフルーツ系の酸味でであったり、様々な花のような香りであったり・・・実に様々な個性を持った酸味があります。

もし、酸味のあるコーヒーがあまり好きではない!という感覚を漠然とお持ちでしたら、ぜひ、上質なスペシャルティコーヒーの中からフルーティーなタイプのものを一度お試しになってみてください。
例えば、エチオピアの南部シダモやイルガチェフェ、例えばアフリカのケニア、ルワンダ、マラウィ、例えば中米のグァテマラやパナマの上質な原種タイプのコーヒーを・・・。
きっとこれまでのイメージとは違ったフルーティーで素敵なコーヒーと出会えるかもしれません。

「酸味」と一言で言っても、良い酸味も悪い酸味もあります。良い酸味の中にもとてもたくさんの様々な酸味があります。それはきっと皆様のコーヒーライフをさらに豊かにしてくれるとても重要なファクターになるはずです。

そう、だってコーヒーはフルーツから生まれているんですから!!

コーヒーは香りの熟成カプセル!

コーヒーを買う時、みなさんは「豆」それとも「粉」で買いますか?
このブログでも何度かコーヒーの豆と粉についてお話しをしてまいりましたが、
今回は、再度コーヒー豆について考えてみたいと思います。

一般的には「粉」で買われるお客様の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
豆で買った方が味も香りも良いのはわかっていても、
忙しい日常の中で飲むコーヒーですから、なかなか豆で買うというのも・・・、
なんて方が多いんだと思います。

そんな多くの方のご意見も知りつつ、
今回、再度、あえてコーヒーを買う時は「ぜひ豆で!」というお話しをさせていただきたいと思います。

コーヒー豆というのは「香りの熟成カプセル」のようなものなんです。

どういうことかといいますと・・・、

コーヒー豆は焙煎後、炭酸ガスの放出と酸素の吸収をしながら熟成をしていきます。
これはいわゆる「酸化」の過程。酸化と言うと聞こえは悪いのですが、焙煎後翌日〜7日程度までは豆が熟成され、コーヒーの香味はむしろ強くなっていきます。
その後香味は徐々に衰え、焙煎後2週間を過ぎますと香味は劣化していきます。
コーヒーが劣化しますと、本来持っていた豊かな香味は薄れ、酸化によるいやな酸味などが出てきます。
この熟成〜劣化のスピードは保存温度にも大きく左右されますので、劣化を遅れさせるためにも保存はできるだけ低温の冷蔵庫や冷凍庫がいい、ということになります。
(もちろん冷蔵庫などでの保存の場合は匂い移りを防ぐ密閉容器での保存が大切、また露滴防止の点からも必要量を取った後は、すぐに戻してくださいね)

但し、この熟成過程は、「豆」の状態でしかおきません。
豆が「香りの熟成カプセル」だという理由はここにあります。
粉挽きにしますと空気との接触面積が一気に10倍以上となりますので、熟成というよりもその後は劣化の方向に進みます。
また、粉挽きは焙煎後、早ければ早いほど良いのか?と言えば、これがまたちょっと違います。
実は焙煎直後の熟成されていない豆を粉挽きにしてしまうと、熟成を飛び越え、一気に酸化だけが進み、コーヒーの劣化をむしろ早めてしまうんです。
粉挽きにする場合は、コーヒーの味が熟成され、香味が馴染んだ状態で粉挽きにすることが重要なんです。
ちなみに香味の馴染んだ状態で粉挽きにされたコーヒーであれば、冷凍保存で1ヶ月程度は美味しく召し上がっていただくことが可能だと思います。
(味覚の感じ方には個人差がありますので、あくまでも一般的なものとご理解ください)

焙煎仕立てというと聞こえはいいのですが、粉挽きの場合は少し注意が必要なんですね。
(というわけで、当店では粉挽きの場合は、焙煎後一晩以上コーヒーを寝かせ、香味が馴染んでからの粉挽きをさせていただいております。)

コーヒーの賞味期限などは、大手流通品などでは、一般的に「1年」程度が設定されています。
これは単純にコーヒーが「傷まない期間」と理解した方がいいと思います。「美味しい期間」ではありません。
真空パックやアロマブレスなど特殊な保存袋を使えば酸化はある程度は抑えられますが、香味もまったくそのままか?と言えばそれは全く持ってナンセンスだと思います。有り得ません。
コーヒーを美味しく飲もうと思えば、焙煎から概ね1ヶ月以内、少なくともご購入される時には焙煎から1週間以内のものを選ぶことが大切だと思います。

さて、香りの熟成カプセルである「コーヒー豆」であれば、コーヒーの香味は時間経過と共に熟成され、焙煎から3日後、1週間後、2週間後と同じコーヒーでも様々な顔を見せてくれ、楽しむことができるはずです。

さらに冷蔵、冷凍保存などをされれば酸化スピードはゆっくりとなり、個人的には常温で保存するよりも旨みが増していくような気さえします。(当店では勝手に「低温熟成」などと言ってますが)

以前もご紹介したように、豆でコーヒーを買うということは、このような「美味しさ」をストレートに楽しむことと同時に、自分でコーヒーを「挽く」という作業によって、コーヒーを挽く時の「香り」も楽しむことができます。
コーヒーの香りは実際にコーヒーを淹れる時よりも、豆を粉に挽いた時の方がはるかに強い芳香を出します。
専門的に言えば、粉に挽いた時の香りをフレグランス(またはドライアロマ)、コーヒーを淹れた時の香りをアロマ(またはウェット・ブロークンアロマ)と言って明確に区別しています。
コーヒーを買う時にはできれば「豆」で、そしてそれを挽くのもぜひご自分でされることをお勧めします。
コーヒーの最も豊かな香りからその味わいまで独占することができるはずですよ!

なんだか、ちょっと難しいお話しになってしまいましたが・・・
豆でも粉挽きでも、最高の状態でお届けいたしております!
どうぞ最高のコーヒーライフを気軽にお楽しみくださいませ。

2008年05月22日

マンデリンを生む不思議な地、スマトラ島・・・

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深煎り、苦味系の代表格、インドネシア、スマトラ島産のマンデリン。
現在当店では、北部アチェ州の希少種ティムティムを紹介中ですが、
それ以外にも量は少ないものの、アテン、ラスナ、ジュンベルなどとても素晴らしいマンデリンがいくつかあります。

このマンデリンを生み出している、インドネシアはコーヒー栽培のとても古い歴史を持つ島でもあります。
コーヒーはもともとエチオピアからイエメン周辺が原産地とされています。
当時非常に高価で重要な交易品でもあったコーヒーの種や苗の管理は厳格なもので、17世紀に入るまでは他の地域で栽培されることもありませんでした。
大航海時代の幕開けと共にアジアに進出したヨーロッパ列強、特にオランダはいち早くコーヒーに目をつけました。
イエメンやエチオピアのコーヒーをインドからインドネシア諸島で大々的なプランテーションとして栽培するようになります。
つまり、インドネシア、マンデリンの産地は歴史上初めてエチオピア、イエメン以外で作られたコーヒーということになるわけです。

今となっては推測の域を出ることはありませんが、当時様々な原種コーヒーがこの地にもたらされ、栽培がされたはずです。(当時としてはコーヒーの品種などの意識はなかったかもしれませんが)
19世紀にコーヒーの天敵とも言えるサビ病の大発生によって大半のコーヒーが全滅してしまいますが、その後も各地で細々と、しかし非常に上質なコーヒーが生き残り今に伝えられています。

インドネシアは島国ですが、非常に入り組んだ地形と高い山、熱帯特有の原生林などに覆われていて交通状況の極めて悪い地域です。民族的にも非常に他民族国家でもあり、狭い地域であってもそれぞれ独自の文化形態をとっているところも多く、いわゆる隔絶された「村社会」が歴然と残っています。
政治的にも不安定な体制が長く続き、失礼な言い方になってしまいますが、教育レベルも高いとは言い難い。ましてやジャカルタなどの大都市から遠く離れたコーヒーの栽培地域などではなおさらです。
このような環境は幸か不幸か昔ながらの品種や栽培方法が今もそのまま残っていたりします。
現在ご紹介中のアチェ、タケンゴン村のティムティムもまさにその典型のようなコーヒーです。

マンデリンのスモーキーでどっしりとしたボディ、独特のフレーバーはこのような環境、品種からの由来と、もう一つ重要なのが、その精製方法にあります。

コーヒーチェリーの構造を簡単に言うと、「ぎんなん」を想像していただくとわかり安いと思います。果肉の中に固いカラがあって、さらにその中にあるのがコーヒー豆となる部分で、いわゆる「生豆」。これを焙煎してコーヒーになります。
この生豆に仕上げる工程が「精製」とよばれるものですが、マンデリンの精製過程はとても変わっています。
スマトラ式とも呼ばれるマンデリンの精製方法はこの地域だけの独特なものです。
一般的にコーヒーの精製方法は摘み取ったコーヒーチェリーをそのまま天日でからからになるまで干してから脱穀をする「ナチュラル」、
摘み取ったチェリーの果肉をすぐに機械でむき、残ったヌメリを取るために水槽などで醗酵処理をして乾燥させ、脱穀を行なう「フルウォッシュド」、
果肉を取った後のヌメリを天日乾燥で乾かし、脱穀する上記二つの方法の中間的な「パルプドナチュラル」というの三つの方法があります。
生豆が元々持つ香味がより重要であることは言うまでもありませんが、この精製方法によっても味わいは変わってきます。一般的にナチュラルはコクが強くなり、フルウォッシュドはすっきりとしたきれいな香味になるとされ、パルプドナチュラルはその中間的な仕上がりと言われています。
チェリーの収穫時期に雨のほとんど降らないブラジルやイエメンではナチュラル精製が今も行なわれていますが、異物混入のリスクなどもあり、世界的にはフルウォッシュドが一般的となりつつあります。

マンデリンの精製方法はパルプドナチュラルに近いのですが、果肉を除去した後、ヌメリを取るための乾燥をあまり行なわずに半乾きのまま脱穀をしてしまいます。
そして生豆の状態になったものを仲買人などの業者がさらに乾燥させて仕上げています。
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なんで、こんな面倒な方法を取るのかといいますと、
収穫の時期はスコールなども頻繁にある季節で、ナチュラルはそもそも不可能。
本来、水資源にはさほど困らない土地柄ですからフルウォッシュド精製の選択が一番いいような気がしますが、実際にはインフラの遅れや資本不足もあり、大半が小規模農家で作られていることもあって大きな施設を必要とするフルウォッシュドも不可能。
必然的にパルプドナチュラル、ということになるのですが、やはり天日乾燥は十分に行なうことは難しく、半乾きの状態で生豆にしてしまう、ということになったようです。
なぜ強引に半乾きで生豆にするかと言うと、コーヒーバイヤーさんたちは生豆で買付をおこないますので、生豆にしないと農民達は現金収入を得ることができないから。
単純と言えばこれほど単純な話しもないような理由ですね。
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ちなみに、生豆にした段階で約50%程度の水分を持っていますので、放っておくともちろんすぐに腐ってしまいます。交通事情の悪いスマトラでは、農民から買い取った生豆がバイヤーの乾燥工場(ここでさらに水分量15%以下まで乾燥させてから輸出されます)に持ち込まれるまでに腐ってしまったり、醗酵してしまったりすることが少なくありません。マンデリンの上質なものを捜すのがとても難しいことの理由の一つです。

理由はともかく、スマトラ島の自然環境と農民の置かれた経済環境が合わさって、この土地独自の精製方法が生まれました。このスマトラ式とも呼ばれる精製方法がマンデリンの独特なフレーバーを作り出す大きな一因となっています。

古い歴史と独特の生産・精製方法。マンデリンって本当に奥が深いです・・・。

余談です。
先日もご紹介しましたが、アチェの2000m級の高地で収穫されたマンデリンとしては驚くほど小さな粒のコーヒーがもうすぐやってきます。
ティムティムはマンデリンらしいフレーバーのなかに柔らかい甘味のある極めてマイルドなマンデリンとご紹介しましたが、こちらのチビ豆マンデリンはマンデリンらしいフレーバーの中にまるでエチオピアのイルガチェフェのようなフルーティーできれいな香味があります。
やはり、マンデリンは奥が深い・・・。すごいのがまだまだありそうです。

2008年02月22日

小麦粉30%値上げに思う・・・

当店の所在地、山梨県富士吉田市は知る人ぞ知る、うどんの里です。
讃岐うどんのように洗練されたなめらかで艶のあるうどんではありませんが、強烈なコシと素朴な味わいでうどんファンの方々には少し知れた存在だそうです。
寒冷な高地であるために、その昔はなかなかお米が取れず、うどんは地域の常用食として伝えられてきました。
私も子供の頃から良く食べてきていて、今では笑い話しですが、うん十年前の中高生の時代には「女の子はうどんがちゃんと打てなければお嫁にいけない!」なんて、言われてるくらいだったんです。

さて、そんななれ親しんだうどんの世界がこのところにわかに揺れています。
原料である小麦粉の値段がこの4月から一気に30%も値上げされるというのです。
既に昨年、2%、10%と2度に渡って値上げがされており、今回と合わせると、昨年の価格よりも約45%値上げがされるということになります。
しかも、値上げはどうみてもこれで終わりではなくて、シカゴの商品取引所ではこの1年間で約2倍に相場が上がっているそうですから、実勢の世界的な価格からみるとさらに50%近い値上げがあってもおかしくないと言うわけです・・・。
日本の場合は輸入小麦を全て政府が一度買い上げてから価格を決めて民間に払い下げるという形をとっているため、多少の価格耐性があるようですが、現実問題、実勢の取引価格を無視した価格がいつまでも通用するとは思えません・・・。

小麦の世界的な価格上昇にはいくつかの原因があるとされていますが、
@バイオエタノール需要によるとうもろこしなどへの転作による小麦の作付け面積の減少
A中国、インドなどによる需要の増大
B干ばつ、洪水などによる収穫減少
C投機マネーの流入による市場の混乱
などが取りざたされています。

既に世界的な産出国であった、ロシア、ウクライナ、セルビア、アルゼンチンなどが輸出規制を始めており、日本の輸入先であるオーストラリア、アメリカ、カナダなどのマーケットにそのしわ寄せがきて、さらなる価格高騰を起こしているようです。

この構図はコーヒーの世界にもほとんどそのまま当てはまりますが、小麦の場合はより深刻です。
問題がコーヒーのような嗜好品と違い、食糧の安全保障に直接関わる穀物であるということに他なりません。
小麦の自給率は約10%。全体の食糧自給率の40%という数字自体が先進国の中でもぶっちぎりの低い数字という中でさらにひどい状態。うどんなんておもいっきり日本っぽい食べ物なのに、讃岐のものも富士吉田のものも、原料の小麦はほぼ100%オーストラリア産なんだそうです。
そんなに高くなるなら、国産で自給率もあげればいいのに?と私自身も思ったのですが、現状の高騰している小麦の価格と比べても国産の小麦の価格は約3倍もするのだそうです。これでは自給率を上げようにも、経済原理からいってなかなかそうは行かないのも無理はありません・・・。

問題は、いくら値段が高騰して高くなっても、売ってくれるうちはまだいいということです。輸出国には輸出義務などはありませんから、今後世界的な温暖化の影響などによって仮に輸出国の生産量が激減するような自体となった場合、日本にそうした農産物が一切入ってこなくなる可能性もあります。
オーストラリアでは年々干ばつがひどくなり、大農園が広がっていた地域が凄まじい勢いで砂漠化しているなんて映像をニュースなどで見かける度に、なんだかうすら寒いものを感じてしまうのです・・・。

安さを求めた結果、農薬入りの餃子におびえたり、最も日本的な食べ物の一つだと思っていたうどんさえ、この先どうなるかわからなくなったり、私達日本人を取り巻く食の世界について、いよいよ真剣に考えなければならない時期になっているのかもしれませんね。

2008年02月13日

ケニアの内紛に思う・・・

ケニア[1].jpg
ケニアの内政が不安定化しています・・・。
ケニアはアフリカ屈指の高級コーヒー生産地。
コーヒー原産のエチオピアとも国境を接し、フルーティでコクのあるタイプのコーヒーで知られる名産地です。
昔から上質なコーヒーを安定して生産することで知られ、ニューヨークの商品取引所のコーヒーの部門には「コロンビアマイルド」という名前で、高級コーヒーとして扱われてきました。ケニア産なのに「コロンビアマイルド」という名前は妙のような気もしますが、歴史的にコロンビア産、ケニア産、タンザニア産のコーヒーは無条件に高級コーヒーとして扱われてきた時代があり、その3カ国のコーヒーをまとめて「コロンビアマイルド」という銘柄で取引所で別扱いにしてきたというわけです。
当店でもケニアは、いくつかの農園、農協産のコーヒーをほぼ1年を通じて入荷させてきましたが、そのケニアのコーヒーがこの先安定して入荷できるのかちょっと不安になるような出来事がケニアの中で起きています。

昨年年末に行なわれた大統領選挙で不正が行なわれたとの報道などから、候補者の出身部族間での緊張が一気に高まり、暴動が発生してしまいました。現在までに500人以上の犠牲者を出し、25万人以上の避難民を発生させる事態となっています。
いくつかのコーヒー農園では農園の放棄もおきているようです。
ケニアは約40もの部族民で構成される多民族国家。アフリカの中では数少ない安定した民主主義国家と考えられていただけに、今回の混乱は世界に大きな衝撃を与えています。

ケニアに限らず、アフリカの各地では数多くの紛争が起きています。
スーダンのダルフール地方における内戦は未だ解決の糸口も見えません。
コーヒーの関係者としては、ルワンダのツチ族とフツ族による凄惨な内戦は忘れることのできないもですし、その後火種は不安定なコンゴへと飛び、部族、資源、周辺各国や欧米資源産業などの思惑もからみ、まさに泥沼の内戦となってしまいました。
また、コーヒー原産国であるエチオピアも隣国ソマリアやエリトリアとの国境紛争を長年続け、今もエリトリアとは一触即発の状態となっています。
アフリカ以外でも、インドネシア、マンデリンの生産地である、アチェ州では今も分離独立問題がくすぶり続けています。インドネシアから独立した東チモールでも先日大統領が銃撃される事態となり、安定への道のりは逆回転を始めたかにも見えます。日本のNPOなどの援助で良質なコーヒーの生産も増えていただけに残念でなりません。

世界各地で起こり続ける内戦、紛争には共通した原因があります。
最大の原因は貧困です。貧困を源に、民族・部族間対立、資源争い、格差、独裁など様々な問題が先進国、民間企業の思惑を巻き込みながら複雑に絡み合っています・・・。
コーヒーは世界約60カ国で生産されていますが、その生産地は赤道を挟む熱帯〜亜熱帯の地域で、大半は貧困にあえぐ発展途上国です。コーヒーの世界では有名なエチオピアも多くの国民が一日1ドル以下で暮らす世界最貧国の一つです。
私達が美味しい!と微笑むコーヒーの裏側には貧困にあえぐ労働者の姿がいつも見え隠れしているのが現実です。教育も医療も満足に受けられない子供達が労働の現場に借り出されることも珍しくありません。

あらゆるものの生産を人件費の安い国で行なうのはコーヒーに限った話しではありませんが、単純な労働と付加価値の高い労働の住み分けという話しではなく、特にコーヒーの場合は貧困者からの搾取というような状況が未だにまかり通っています。
そのような状況を少しでも良くできる可能性を求め、フェアトレードなどの取り組みも行なわれていますが、まだまだ道のりは遠いと言う他ありません・・・。
スペシャルティコーヒーというカテゴリーのコーヒーは、特定の産地や生産方法を厳密にチェックしますので、生産現場と私達消費者をよりダイレクトに結びつけ、生産者の労働環境改善にも大きく貢献する場合が少なくありません。
これは当店がスペシャルティコーヒーを扱う理由の一つでもあります。(もちろん第一に「美味しいコーヒーを求めて」ということではありますが)
しかし、今回ケニアの暴動を聞き、「ああ、またか」と思うと共に、少なからずそれらの国々の恩恵で商売をさせてもらっている身でありながら、ほとんど何もできずにいる自らの無力さに歯がゆさを感じています・・・。

2008年02月08日

変わるということ。〜老舗の条件〜

先日、ある老舗和菓子店さんのご主人から商売を続けること、老舗でありつづけることなどについてのお話しをお伺いする機会がありました。
日本は世界的に見ても断トツで長寿企業の多い国なんだそうです。
社歴200年以上の長寿企業が日本には3000社以上存在しています。ヨーロッパではドイツが800社、オランダ200社、アメリカでは14社、5000年の歴史のある中国も9社、台湾7社、インドで4社など世界的にみても特異とすら言えるほど老舗長寿企業がたくさん存在しています。
社歴100年に縮めると、なんと5万社を超えてしまうのだとか!?
世界最古の会社も寺社仏閣の建築を扱う、大阪の金剛組さんで、西暦578年設立、創業1400年、大化の改新より前ですからもう、驚きと言う他ありません。

今回、お話しをお伺いした和菓子屋さんも、創業から200年以上、和菓子の世界で「老舗」の地位を守られてこられた名店さんです。
なぜ日本にこれほど長寿企業が多いのかには様々な要因があるらしいのですが、長寿企業と呼ばれる企業には共通して「敏感であること」「進化を基礎とする」という気質があるとのことでした。
その和菓子店さんの家訓も、なんと「変身」なんだそうです。
老舗というと「変わらないこと」「守り続けること」などというイメージが強いのではないでしょうか。
でも、ご当主さんは、「敏感に日々変わることこそ重要だ」とおっしゃるのです。
変わると言っても、例えば和菓子屋さんが建設会社に変わるというのではなく、核となる商品、サービスからは大きく外れずにその核を中心に絶えず研鑽を重ねるということ。

ご当主いわく、
「今ある商品を明日にそのまま伝えること、伝統を守るだけでは、老舗の看板を守り続けること、信用を維持し続けることはできません。もしいわゆる老舗と呼ばれるお店がなんの進化も変化もしないままであれば、そのお店が20、30年先に生き残る可能性はほとんどないと思います。お客様の目や耳や舌ははそれほど厳しいもので、私達が少し油断していると、あっという間に私達の感性を飛び越えて行ってしまいます。日々、より良いものを求め、お客様の目には見えないような小さな部分で絶えず新しく生まれ変わり続ける。その志を持つことこそが老舗であり続ける最低限の条件だと思います。砂糖一つとっても、その種類、色味、荒さ、使うタイミングなど追及すべきことは果てしなくある。外見上は同じものを作っているように見えても実は時間経過と共に日々進化していけなければ、老舗ではいられないのです。」とのこと・・・。

なんと含蓄のある言葉か・・・。
私達には「昔からこうだから・・・」「これは決まったことだから」という理由で、なんとなく続けてしまっていることがどれほど多いことか・・・。自らの不明を思わず恥じ入ってしまいました。
「同じもの」を作り続ける、提供し続けているようでも、実は全く同じままなのではない、「より良い同じもの」を生み出し続ける、それこそが信用、信頼の礎となるのだということを痛感させられました。
それは私共で手がける、コーヒーやお茶にも全く当てはまること。
今後のよき指針をいただいたような気持ちでした。
アメリカ式の短期結果を追求する経営手法ばかりがとかく持てはやされますが、日本の先達が築き上げてきたこのような経営方法もやはりすごいものだと思います。

ちなみに、老舗企業の代表的な存在でもある伊勢の赤福さん、色んな問題がありましたが、昨日なんとか再開されたそうですね。営々と築き上げた信頼も崩れるのは一瞬。各地でおきる同様の事件に眉をしかめることの多い昨今ですが、商売の厳しさと、またその崩れそうになった赤福を待ち続け、再開の日にも早朝から行列を作って支持をしたお客様のありがたさを感じずにはいられません。
赤福さんや、北海道の白い恋人さんが他の企業と違い復活ができたのは、それぞれ先達の作り上げてきた信用の貯金の大きさだったんだろうと思います。営々と努力を続けてきたご先祖様というのはありがたいものです・・・。

2008年02月06日

エスプレッソの世界とドリップ、カフェ・ジャポネーズの世界

現在、日本で最もポピュラーな「コーヒー」と言えば、ペーパーフィルターでドリップしたタイプのものです。
でも世界的にはこのフィルタードリップのコーヒーは以外に少数派なんです。
ヨーロッパやアメリカではエスプレッソタイプが、特に外食産業では圧倒的に主流です。
日本でもここ10年ほどの間で、スタバなどの外資系カフェチェーンの進出を機にエスプレッソの存在が急速に大きくなってきました。
でも、同じコーヒーと言っても、ドリップコーヒーとエスプレッソコーヒーではその味わいにはかなり大きな違いが生まれます。
1杯約10〜15g程度のコーヒーを中挽きにし、2分〜4分程度の時間をかけてゆっくりと100cc〜120cc程度、コーヒーの成分を抽出するのがドリップコーヒー。
1杯約7〜10g程度のコーヒーを極細挽きにし、15秒〜20秒程度の極短時間に圧縮された蒸気でコーヒーのエキスを30cc〜45cc程度抽出するのがエスプレッソ。
両者は同じコーヒーと言ってもかなり違う存在であることがお分かりいただけると思います。
伝統的に日本で飲まれてきたドリップコーヒーは、一杯の分量も100cc以上と多く、ゆっくりとブラックで楽しむことを中心に考えられたコーヒーですが、ヨーロッパ、特にイタリアなどを中心として飲まれてきたエスプレッソコーヒーは一杯30cc程度と少量で、砂糖やミルクとアレンジしてバール、カフェなどで短時間にさっと楽しむことを中心に考えられたコーヒーです。
(一般的な場合のお話しです。もちろん日本のドリップコーヒーも砂糖やミルクアレンジもしますし、ヨーロッパのエスプレッソもストレートで飲む場合だってあります。ちなみに、コーヒーをブラックで飲むという習慣も実は日本以外ではあまり多くありません。コーヒー原産地のエチオピアや、コーヒー生産大国のブラジルなどでも、これでもか!というくらいお砂糖を入れて楽しんでます・・・、ことコーヒー自体の味わいを大切にする、と言う観点で言えば、日本人ほどコーヒーそのもののの味わいを愛している国はないかもしれません)
このようなことから、日本では着席で滞在時間も長めの「喫茶店」というスタイルが、イタリアなどでは立ち飲みで滞在時間も短い「バール」などのスタイルが中心となりました。

現在、日本でも本格的なエスプレッソやマキアートなどを飲めるカフェがどんどん増えています。
時々、ドリップとエスプレッソのどちらが優れたコーヒーなのか?というご質問を受けることがあるのですが、個人的にはその比較自体にはあまり意味がないように思います。
抽出方法も楽しみ方も、なによりその味わいも様々となるわけですから、実際に飲まれる方のシチュエーションに合わせ、お好みのものをチョイスされればそれでいいのではないかと思うのです。
但し、ペーパーフィルターやネルドリップ、サイフォンなどのドリップスタイルのコーヒーはもはや日本特有のコーヒー文化「カフェ・ジャポネーズ」と言ってもいいようなものですので、エスプレッソだけでなくそのようなドリップスタイルも大事にしていだければな〜と少なからず思ってはおります・・・。

日本でもエスプレッソの需要が高まることに伴い、近頃では全自動のエスプレッソマシーンを置かれる業務店様が多くなってきました。
この業務用全自動エスプレッソマシーンはボタン一つでエスプレッソから普通のコーヒー、アメリカン、ラテなどのアレンジまで作ってしまいます。価格も10万円前後から100万円を超えるようなものまでありますが、人件費とスペースの削減などが可能なため、小さなカフェから巨大チェーンレストランまで、様々なシーンで使われるようになっています。
但し、私はこのような全自動マシーンで提供されるコーヒーには少し疑問というか、注意が必要だと思っています。
多くの全自動マシーンで出される通常のコーヒーは「ブレンドコーヒー」という名前で提供されていますが、エスプレッソスタイルで抽出したものをそのまま出し続ける、または、エスプレッソにお湯を足して作る、いわゆる「カフェ・アメリカーノ」とか「ロング・ブラックコーヒー」と呼ばれるタイプのコーヒーです。使う豆がブレンド豆であれば、間違いではありませんが、日本で昔から親しまれてきたドリップスタイルのコーヒーとは別のものです。
このタイプのコーヒーは表面に泡が覆っているのが特徴です。これはエスプレッソを抽出する際の、いわゆる「クレマ」と呼ばれる泡で、お湯で割ってもクレマがある程度残ってドリップコーヒーとはちょっと違った仕上がりになるわけです。
クレマがあると、なんだかちょっと美味しいコーヒーのような気がしてしまいますが、美味しさとはほぼ無関係です(エスプレッソの場合はこのクレマはとても重要になります)。もの珍しさも手伝って「当店のコーヒーは泡立ちコーヒーです!」なんていうキャッチコピーを見かけることがありますが、私的にはちょっと痛いコピーのように思えてなりません・・・(゚_゚;)

あくまでも上質なコーヒー豆を使用するという前提の上ですが、
ドリップスタイルは単に昔から馴染んでいるというだけでなく、コーヒーの繊細な香味をあますことなく表現し、味わうにはとても優れた抽出方法です。
お湯割りスタイル、カフェ・アメリカーノスタイルのコーヒーは、マシーンで簡単に作れるというメリットは非常に大きいのですが、少し濁った質感にもなりますし、コーヒーの複雑な香味、味わいを表現するにはやや見劣りがしてしまいます。カプチーノなどのようにミルクアレンジやお砂糖と合わせることを前提に作るエスプレッソがベースですから、それを単純にお湯割りでブラックでも飲もうとするなら、コーヒー豆の選択にはかなり神経を使う必要があります。
あくまでもエスプレッソコーヒーのセカンドユース的な飲み方であるということを認識しておく必要があるのではないかと思います。

コーヒーの効能・・・

2月4日付の日経新聞に、「コーヒー豆にアルツハイマー病を予防する効果があるかもしれない」という記事が出ていました。
実際には生豆に含まれる成分で、焙煎したコーヒーではほとんど消えてしまうらしいんですが・・・。
これに限らず、コーヒーの健康効果については内外を問わず、様々な大学、研究機関などでも研究の対象となっているようです。
昔から、どちらかというと「コーヒーは健康には害になる飲み物」という扱いであったように思います。
でも近頃ではだいぶ話しがかわってきていて、コーヒー悪者説の代表的なカフェイン自体も有害というよりは、コーヒーなどで適度に摂取する分には、血流を促進したり、腎臓の働きをよくしたり、脂肪の代謝を活性化させたりと、かなり嬉しい働きがあることがわかってきました。
クロロゲン酸などはダイエットの効果が期待できるなんてお話しがあったりして、昨年あたりは、クロロゲン酸が最も多く摂取できるように浅煎りのマンデリンなんかもよく話題になったりしました。
それ以外にも新聞などの報道では、1日3杯のコーヒーを飲む人は肝臓がんになるリスクが低くなるとか、糖尿病の予防が期待できるとか、活性酸素の抑制が期待できるとか、なんだか、21世紀の救世主のような扱いをされだしていまして・・・、なんだかコーヒーさん達もおしりがこそばゆいのではないかと心配してしまいそうです。(^-^;)

私的には、様々な健康効果もあるのかもしれませんが、コーヒーの健康効果は美味しく飲んで心からリラックスすることでしょうか。
美味しいコーヒーを飲むと口も鼻もそれから心までもフワフワと本当に幸せな気持ちになってしまいます。
これ以上の健康効果なんてないような気もするんですが・・・
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